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皮膚ガンを見落とさないための六箇条

 次に、私は、皮膚科の専門知識のない方が、皮膚ガンを見落とさないためのポイントを以下の6項目にまとめてみました。

大きくなるイボは皮膚ガンを疑え


 

 たぶん、どなたでも皮膚にこれまで無かったイボが突然現れれば、ひょっとしたら皮膚ガンかもしれないと考えるかと思います。特にその際にイボが明らかに大きくなるようであれば、まずは、皮膚ガンを疑いましょう。これを注意することで、扁平上皮癌、基底細胞癌、悪性黒色腫、悪性リンパ腫などを発見できる可能性があります。

直りにくい湿疹は皮膚ガンを疑え

 残念ながら、全ての皮膚ガンがイボ状に隆起した病変をつくるとは限りません。あまり皮膚面から隆起しない、一見、湿疹様の病変を呈することがあります。多くの湿疹は、ステロイド軟膏を塗れば、1〜2週で皮膚病変が消退ないし改善します。ステロイド軟膏を塗っても良くならない湿疹様の皮膚病変があれば、皮膚ガンを疑いましょう。これにより、日光角化症、ボーエン病、乳房外パジェット病などを発見できます。
(図1:日光角化症 図4:乳房外パージェット病 図6:類乾癬、菌状息肉症 図7:ボーエン病)

痒くない皮膚病は皮膚ガンを疑え

 皮膚ガンの特徴の一つが、痒み痛みを伴わないことです。湿疹が、ほぼ100%痒みを伴うのに対して、痒みをわないという皮膚ガンの特徴は、私たち皮膚科医にとっても、皮膚ガンを診断する手助けになります。イボであれ、湿疹様の病変であれ、痒みがなければ皮膚ガンを疑いましょう。これで、日光角化症、ボーエン病、乳房外パジェット病などを発見できることがあります。

直りにくい皮膚潰瘍は皮膚ガンを疑え

 皮膚ガンの多くは、イボ状であったり、湿疹様であったりしますが、時に皮膚が崩れて潰瘍となっていることがあります。皮膚潰瘍は、皮膚ガン以外の原因で生じることが一般的ですが、時にその中に皮膚ガンが混じっていることがあるので要注意です。また、皮膚ガンによる皮膚潰瘍は、どのような治療を行なっても治らないのが特徴です。これで、扁平上皮癌や基底細胞癌を発見できるかもしれません。

黒いイボは皮膚ガンを疑え

 皮膚ガンの中で、最も手強いガンが、悪性黒色腫です。俗に言う黒子の癌です。それ以外にも、基底細胞癌も黒い癌の一つです。
(図2:基底細胞癌 図8:血管肉腫 図9:扁平上皮癌)

皮膚ガンを疑ったなら皮膚科専門医に受診しろ

 せっかく皮膚ガンを疑って病院を受診しても、その先生が皮膚ガンのことを分かっていなければ正しい治療をしてもらえません。やはり、餅は餅屋で、日頃から皮膚病を見慣れている先生が、最も正確に皮膚ガンを診断できます。頭部、顔面、口腔内、外陰部、手のひら足の底、爪、外から見られる部位すべての皮膚、粘膜の変化に皮膚科医は精通しています。

皮膚ガンの予防

 多くの場合、皮膚ガンの発症原因は不明ですが、少なくとも、紫外線の曝露とある種のウイルスが原因であることは明らかです。皮膚ガンは、一般に、顔や手の甲など日光によく曝露されるところに出やすいのですが、この事実が、日光、特にその中に含まれる紫外線が皮膚ガンの原因であることを端的に物語っています。
 それ以外に、子宮癌と同様に、ヒト乳頭腫ウイルスが皮膚ガンの原因になりますし、EB ウイルスやヒト成人型T細胞ウイルスによっても皮膚にリンパ腫が生じることがあります。予防という観点からは過度の紫外線曝露を避けることが最も大切です。紫外線を浴びすぎないということは、年をとってからばかりではなく、子供の頃から心がける必要があります。紫外線曝露は、皮膚ガンの頻度を増加させるだけでなく、皮膚の老化も促進します。

皮膚ガンで苦しまないために

 いろいろお話ししましたが、毎日、目にしている自分や家族の皮膚に、日頃目にしない変化を認めたら、迷わず皮膚科を受診するという心構えが、皮膚ガンで苦しまない秘訣です。
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